身体的な動作から入っていく

 

茶道では、
由緒あるお道具を使うときや、
お客様が持参くださったお道具を早速使わせていただく時などに、
特別にあらたまった扱い方をする点前がございます。

 

 

「〜かざり」というもので、
特別な扱いによりお道具に敬意を表し、
私にとって大切なものなのですとお客様に示すわけです。

 

私はかつて数年ではありますが、
小中学生のお嬢さん方に、
茶道の稽古をさせていただいた時期がありました

 

特に低学年のお嬢様には、
お作法よりも、美味しく楽しくお菓子とお抹茶を頂くことを主としておりましたが、
ある程度の所作を身につけることや、
その他のバリエーションについてもお伝えしなければなりません。

 

そんな時は、この「かざりもの」を活用しました。

 

例えば抹茶をすくうさじ、
「茶しゃく」という道具を飾る「茶しゃくかざり」などは、
よく稽古に取り入れました。

 

「飾る」といっても、お道具は普段遣いの稽古用
特別由緒もなく、大量に作られた安価なものです。
当時私が買い求めたものですから、
茶杓は7〜800円程度と記憶しています。

 

ですがそうした安価なものでも、
心を込めた丁寧な所作で扱いますと、
それがとっても貴重なのものとして
感じられるのですから不思議です。

 

 

 

「ある物を大切なものとして扱うとき、
それを身体的な動作によって表現したものが
茶道の点前である」
〜「詳しく学ぶ小習 上巻」田中仙堂著より〜

 

数年ぶりで茶道のテキストを開きましたが、
解説の奥深さに感じ入ってしまいました。 

 

これはひょっとしたら、
自分自身にも応用できそう

 

「自分自身を大切なものとして扱うとき、
それを身体的な動作によって表現する」

 

茶道では物を置くのも取り上げるのも、
心を込めて丁寧に扱います。

 

例えば、
お茶碗の中でシャカシャカとお抹茶を混ぜるときに使う、
「茶せん」(竹を割いて黒い糸で止めた、泡立て器のような形のよく見かけるあれです)という道具は、
その扱いについて先生にこう教わりました。

 

畳に置くときには
「植え込むように」

 

畳から取り上げるときには
「そっと手折るように」

 

 

 

言葉と滑らかな動きとで
説明くださった先生の表情が、
とてもお優しかったことをよく憶えています

 

その逆の方が一般的なのかも知れませんが、

 

丁寧な所作には、
きっと丁寧な心が付いてくる

 

そんな風にも思うのです。

 

ACな私たちは、
自分に優しくすることが大切なのだと
学んで知ってはいたとしても、
中々そのようにはできません。

 

実践している振りをして
実はジャッジしたり責めてみたり、
自ら鞭打って追い込んだりしてしまいがち。

 

 

社会生活を送る上では、
そうしなければならない事態に出くわす頻度が
とっても高いことは事実であり、
そうするしか無いのが実情。

 

ですが「常に」そういう状態であることは
問題だといえるでしょう。

 

そんなことを続けていたら、
自分との関係性は悪くなる一方

 

ご自分に優しくしてみる時間も
確保したほうが良さそうです

 

でしたら、
「身体的な動作」から入ってゆくことが、
ご自分を大切にするためのきっかけとなるかも知れません

 

身だしなみや持ち物を丁寧に整えたり、
お風呂上がりに優しく丁寧に身体を拭いてみたり。
手足のマッサージも良さそうです。

 

 

 

ほんの少しのことでも良いのです。

 

大切に扱うことを日々繰り返しているうちに、
ご自分の存在が
心から大切でかけがえのないものに
きっとなってゆくのだと思うのです