心理療法として従来より用いられていた「行動療法」と「認知療法」の二つを統合した形で1990年代に体系化されたものが「認知行動療法」で、その名の通り「認知(考え)」と「行動」に働きかけることで、ストレスによる悪循環から抜け出そうというものです。
イギリスやアメリカでは、軽度のうつ病や不安障害の治療の第一選択とされ、寛解後の再発予防効果が高いことでも知られています。日本においても近年注目されており、精神疾患だけではなく広くストレスマネジメントとして、司法、産業、教育等様々な分野において「認知行動療法」を用いたアプローチが展開されています。
「認知行動療法」。長い名称で分かりにくい印象ですが、実は健康な方にとっては日常においてごく自然に使いこなせているストレス対処スキルでもあるのです。
ただ、成長過程で健全なスキルを獲得できていなかったり、獲得できていても一時的な心身の衰弱によりそれが適切に機能しない場合があります。そうなると辛いストレス状況から抜け出すことが困難になってしまいます。
ストレス状況下において私たちは、しばしば不快な感情を抱きます。
その感情は、そのときに浮かんだ「考え=認知」に大きな影響を受けているのです。
「劣等感」や「孤独感」、「悲しみ」あるいは「怒り」等々いわゆる「マイナス感情」といわれるものが、心理的に大きな負担となることはご存知の通りです。加えてそれらは身体にも影響を及ぼし、動悸、めまい、冷や汗等、様々な不快な反応を示すでしょう。
あるいは咄嗟に不適切な行動に出て、事態を悪化させてしまうかも知れません。
「認知行動療法」の理論では、これらの「ストレス状況」「考え(認知)」「感情」や「身体反応」「行動」は全て、相互に関連性があるとしています。このことから、ストレス状況を抜け出せない悪循環に陥り辛くなってしまっても、意図的な働きかけができる「考え(認知)」と「行動」に工夫を施せば、相互に関連する「身体反応」や「感情」に変化をもたらすことが可能であると説明できます。
その結果、ストレス状況への健全な対処も可能であるという理論です。
「認知行動療法」は、少し学べばすぐに使える万能薬であるかのようにお感じになるかもしれません。しかし残念ながら「認知行動療法」に即効性はありません。なぜならこのスキルを落とし込むには、相応の時間と練習が必要となるからです。練習のためには、毎回「宿題」に取り組んで頂くことにもなります。ですがそれだけに着実に身に付き安全であると言えます。しっかり習慣付ければ一生活用でき、ACな私たちが健全な「生きやすさ」を維持するるために大変有効なスキルなのです。
セラピーでは、スケジュールに一定の枠組みを設け、枠組みに則した形で、クライアント様とカウンセラーとの共同作業により問題解決をはかります。事態をじっくり観察し、ストレス状況と背景に潜むその方独特のパターンについてとことん研究する姿勢です。それにより、悪循環を断ち、どの技法を適用したらよいのか試して検証し、健全な対処法を見つけます。傾聴と受容を中心とした個人セッションにより、丁寧な話し合いを重ねながら進めますので、どうぞご安心ください。